剥脱性口唇炎の病理

この疾患は非常に厄介な疾患で、西洋医学的な治療がほとんど奏功せず、患者は路頭に迷って、こんな辺鄙な漢方薬局に相談に訪れる。

これまでかなりの数の剥脱性口唇炎の漢方相談を行ってきたが、ここにきてようやくこの疾患を改善するための病理理論を構築することができた。

何事も「常と変」があり、イレギュラーな人もいるのでまだまだ研究は必要だが、「常」に対しては、構築した理論を元にした処方を使用することで、ほとんどケースで好転する。

ここ最近だけでも、数名以上の方の口唇異常が治まり、漢方を卒業できるまでもっていけた。

この話はもちろん、剥脱性口唇炎に限り、たとえば滲出性口唇炎や急性口唇炎はその限りではない。

過去に経験した症例を見直してみると、その時点である程度、気づいていたにもかかわらず、そこをさらに突っ込んで考えることがなく、スルーしていた部分が多々あった。

これは自分の中では非常に反省すべき点で、やはり1つ1つ実践と検証を繰り返して、もっともっと精度を上げていかなければならないと痛感した次第である。

とにかく剥脱性口唇炎では、皮の凸凹度合い、色味、剥がれるサイクル、剥がれる皮の厚さ、剥がれた後の口唇の赤み、滲出液の有無、細胞の密着度を詳細に確認した上で、それが生じているメカニズムを八綱弁証を元に分析し、それに応じた方剤を複数個使用する必要がある。

だいたい方剤がフィットすると、剥がれるサイクルが2~3回繰り返すうちに、皮の状態がキレイになっていくのがわかる。

本人は毎日気にしてみているので、気づかないこともあるが、毎日同じ時間に写真を撮ってもらい、それを相談時に過去にさかのぼってきちんと追跡できる環境を整えておくことで、見逃してしまいがちな変化に気づくことができるようになる。

したがってこの疾患の漢方相談では、ボケていない毎日の口唇の写真が必須となる。

人によってはボケていたり、毎日ではなかったりすることもあるが、この場合はどうしても精度が落ちて改善までに日数がかかるようになってしまう。

また今回構築した病理理論はアトピー性皮膚炎など、他の皮膚疾患とは明らかに異なり、使用方剤の一部は重複するが、肝腎の主方剤は全く違ったものになる。

これから少しずつ、改善した症例の画像を乗せていきたいと思っているので、参考していただきたい。(相談者が撮影した画像である関係上、ピンボケしていたりすることがあるが、その辺りはご容赦願いたい。)