典型的な剥脱性口唇炎は炎症ではない事実

剥脱性口唇炎と一言で言っても、色んな病態があるが、典型的な症状、例えば7~14日で白~やや黄色の皮がブロック状に取れていくタイプは確実に炎症ではないといえる。

西洋医学的には炎症なのだとしても、東洋医学的には全くそれらの所見はそろわない。

だからこれらのタイプにステロイドやアズノールを使っても効果が出ないことが多い。

しかし西洋医学的にはそれらの外用薬しかなす術がないから、それを延々と使い、逆に悪化させたりしている。

これまで散々、様々な視点からこのタイプの剥脱性口唇炎を数百例診てきたが、ようやく共通する病態を見出すことができた。

その病態に対し、それに対応する方剤群を寒熱や虚実という東洋医学独特の視点から選薬し、比較的長期に服用することで正常な皮に変化していく。

もちろん変化の度合いやスピードは各個人の自然治癒力や漢方が効きやすい体質かどうかなどで変わってくるが、概ね良好な結果が得られている印象がある。

残念ながら、同じような視点からきちんと選薬しているにもかかわらず、改善が見られない人もいるが、これは漢方がもともと効きづらい体質なのではないかと現時点では考察している。

剥脱性口唇炎では、口唇の皮が何かしらの刺激によってダメージを受け、外から刺激(水分・唾液・食事・紫外線など)に対してバリア機能を発揮することができなくなった結果、肥厚して守るスイッチが生体内で入ったこと、さらに刺激によるダメージによって口唇の肉の分野にまでその影響が及んだ結果、正常な皮を作るメカニズムが狂ってしまったことによって生じている。

これを東洋医学的に解釈し、それらの刺激から口唇の皮を守りながら、ダメージを軽減させてやることで、皮は自ずと正常に戻っていくのである。

このような視点から症状が改善している例は枚挙にいとまがない。(もちろん全然治らない例もあるのが臨床の難しいところでもある・・・。)