剥脱性口唇炎の漢方療法について

剥脱性口唇炎を漢方で治療する場合・・・
重要な要素は
① 皮が肥厚するスピード
② 剥がれるサイクル
③ 乾燥度
④ 皮の色
⑤ 剥がれた後の痛み・腫れ・赤み・熱感の有無
⑥ 皮の密着度
⑦ 口唇の血色
⑧ 病歴および成因
⑨ 浸出液・出血の有無
⑩ 細菌感染の有無
など非常に多岐にわたる。

他の漢方薬局では、剥脱性口唇炎は口唇の病であることから「脾胃」との関連を考え、脾胃に働く方剤を使用しているところが多いようだが、実際の臨床では、脾胃との関連が主になることはなく、アトピー性皮膚炎と同様に皮毛・肌肉の病と考えて肺脾に働く生薬を用いることが多い。

そしてその中で最も多い原因が「瘀血」となる。

ただしこの瘀血は、これまでの経験上、非常に厄介なもので桂枝茯苓丸や冠心Ⅱ号方などあらゆる活血剤を用いてきたが、そんなもんじゃビクともしない。したがって活血および生肌作用に優れた優秀な活血剤を使う必要があるが、その場合には口唇の皮の状態と血色とをしっかりと鑑み、適切な配合比率になるようにしなければならない。

実際の相談では、剥脱性口唇炎だけでなく、単純な口唇炎であったり、リンパ液の浸潤、細菌感染を起こしている例など、本当にいろんな種類の口唇トラブルを診てきたが、その中でも一番厄介なのは、剥脱性口唇炎とリンパ液の浸潤である。

本当の意味での剥脱性口唇炎は、口唇という部分の新陳代謝異常から皮膚甲錯が起こっている状態として考え、それぞれ慢性炎症・活性酸素による組織破壊・瘀血による循環不良・ターンオーバー異常による新陳代謝不良の3タイプに大きく分けるが、どれだけ考えて漢方を合わせても時間がかかることが多い。

また浸出液が出るタイプでは、炎症があって浸出液が出ているときは炎症さえ抑えることができれば、比較的早く浸出液はなくなるが、組織が脆弱で少しの刺激で表皮が破れ、浸出液が出るタイプでは、非常に時間がかかる。

これらの病態に対しては、西洋医学的治療にほとんど反応しないため、打つ手なし。ビタミン剤やプロペト(ワセリン)でお茶を濁すしかない。そこを何とか漢方で改善するのだから、当然時間がかかる。

当店では日本全国から剥脱性口唇炎の相談が来るが、相談を申し込む際には、「予想以上に時間がかかるかもしれない」ということを理解した上で問い合わせいただきたいと思う。

そして実際、腰を据えた漢方相談を続ければ、多くのケースで何らかの改善はみられる。

今まで100例以上の症例を診ているが、剥脱性口唇炎は本当に難しい疾患だという部分については変わらないというのが本音であることだけは知っておいてほしい。