脱保湿すべきかどうか

剥脱性口唇炎に悩んでいる人たちの多くは、基本的に見た目を非常に重要視するため、ワセリンなどを使用して保湿することが多い。

一方、ネットの情報ではあまり保湿しないほうが口唇の皮に対しての影響が少なく、脱保湿をすることで症状が軽減したという話もある。

そういう情報を見ると、自分も脱保湿をすればよくなるんじゃないかと思い、やってみるけど結局よくならず、結果的にどちらにしたらいいのかわからなくなって右往左往していることが多いように思う。

それに対し、廣田漢方堂での指導方針としては、「炎症」がなく、単に皮が肥厚し、それが剥がれても特段疼痛・赤み・腫れ・熱感が生じるような状況でなければ、保湿のためにワセリンを塗布しても問題ないと考えている。そのような状態であれば、塗布しようがしまいが、症状に影響を及ぼすことはほとんどない。

ワセリンを塗布すべきでない状況は、明らかに「炎症」が存在し、口唇の皮がワセリンの塗布により軟らかくなり、未だ剥がれるべきでない時期にちょっとした刺激でズリっと剥がれてしまうような危険性がある場合である。

過去、数年にわたって口唇の皮が剥がれるために痛み・熱感・腫れ・赤みが出てしまい、その状況に悩んでいる女性において、その原因が見た目を少しでも良くするために塗布していたワセリンのために皮が柔らかくなりすぎ、洗顔や歯磨きの際にズルっと向けてしまうことで炎症が煽られ、その状態から離脱できなくなっていたケースを経験している。

また大学病院の医師から、口唇炎の痛みを軽減させるためにワセリンを分厚く塗布して保護しなさいという指示をきちんと守り、ワセリンをたっぷりと塗布していた女性では、ワセリンの影響で新しい皮が全く形成されず、形成されてもワセリンの油分ですぐに剥がれてしまい、慢性的な疼痛が落ち着かず、迷路にはまり込んでいた症例も経験している。医師は、その状況にあるにもかかわらず、ワセリンだけではなく、ステロイドなどの内服して痛みを軽減させようとしており、服用すべきかどうか、その女性は悩んでいたものの、僕が皮の形成を邪魔しているのはワセリン以外の何物でもないから、一度脱保湿して、その疼痛の原因がどこにあるのか、皮の形成ができない要因がどこにあるのかをきちんと見たほうがいいとアドバイスを行い、脱保湿をしたところ、急激に皮の形成が促進され、疼痛が著しく減少した。

このように脱保湿すべきかどうかは、その人の唇の皮の状態がどのような状態で、それがなぜ生じているのかを客観的に把握した上で判断すべきである。

決して見た目をよくするため、少しでも改善したいという思いから行うべきでないと僕は考えている。