瘀血が関与する剝脱性口唇炎

剥脱性口唇炎の相談に乗っていると、病歴が10年近くに及ぶ症例に出会うことがある。

一般的にこの疾患は、剥がれる口唇の皮の性状・色・サイクル・範囲などを詳細に把握することによって、寒・熱、虚・実の八綱を弁別し、そこからさらにそれらの問題の出所を臓腑経絡から導き出して方剤を決定していく。

しかしながら、口唇という組織は、身体の中の小さな組織であるがゆえに、漢方薬をしっかりと使っても、その部分に到達することができる成分が相対的に少なくなるため、効果を発揮するまでに一定の期間を要することが多い。

中でも病歴が長い場合には、口唇の毛細血管が炎症によって潰されてしまったりすることで血行障害を起こしている(これを瘀血という)ことが多く、いくら漢方を使用しても、患部に成分が到達しないことがある。

この場合には、虚実寒熱、臓腑経絡を意識した方剤を使用してもほとんど効果を発揮しない。

そのときには、とにかく口唇の血流障害を是正し、患部に停滞している老廃物や血行不良を改善すべく、徹底的に活血剤を使用する必要がある。

そうすることによって徐々に口唇の血色がよくなったり、瘀血を除去するだけで口唇の状態が改善したりしてくる。これらの変化が見られたところで、症状を引き起こしている本質を改善するための漢方を使うことで状態を好転させることができるようになる。

これまでの経験上、頑固で慢性的に続いている剥脱性口唇炎の場合には、瘀血を伴うケースが圧倒的に多く、時には数か月かけて丁寧に瘀血を処置してから本質に迫らざるを得ないケースもある。

この厄介な疾患を治すためには、頭を柔軟にして、個々の状況を詳細に分析し、それぞれに合わせた漢方の選択が必要になってくる。