これは最近実際にあった症例。
20代の女性が関東から剥脱性口唇炎で漢方薬を服用していた。
当初は、慢性炎症に伴う剥脱性口唇炎として総合的な体質とあわせて方剤を組み合わせていた。
そうしたところ、年末年始にアルコールや暴食が影響したのか、年明けに急激に口唇の赤みが強くなり、痛みが酷くなってしまったという報告を受けた。
これは急性炎症の徴候があるとして、今まで服用していた漢方薬を一旦中止し、すぐさま急性炎症を落ち着かせる漢方薬に変更。
温病学の概念を活かしながら、症状を詳しく聞いて、急性炎症のタイプは気営両燔と判断し、それに対応する方剤を使用。
運よく、急性炎症は1週間もかからないうちに治まり、その後は再び状態を確認しつつ、活血と新陳代謝活性化の処方に変更した。
この処方を2週間続けることによって、剥脱性口唇炎の状態はかなり改善。
本人も以前ほど口唇のことが気になる頻度が減り、精神的なストレスがかなり軽くなっていると仰っていた。
剥脱性口唇炎の場合には、その炎症が起きている要因がどこにあるのかをしっかりと判断し、それを生じさせている下地を丁寧に漢方で改善していくことで、症状が軽減することが多い。
今回の場合も、これまでの経験をもとにして、突発的に生じた急性炎症をうまくコントロールでき、悪化を食い止めることができた。
さらにはそこから慢性炎症が酷くならないようにすることもできたため、症状が軽減したものと考えている。
剥脱性口唇炎の漢方療法は非常に難しいが、正確にパターン認識ができるようになれば、今回のようにうまくコントロールできるのである。