剥脱性口唇炎 ~20代女性の症例~

中越地方在住の20代女性

口唇のことを気にすることなく生活してきたが、初回相談時の3か月前にヘルペスができたために抗ウイルス薬を塗布したところ、乾燥が始まり、自分で剥がすことを繰り返すようになる。ステロイドやワセリンを塗布するも、逆にヒリヒリ感が出現し、症状が悪化する。

皮膚科を受診しても改善しないことからネットで当店を知り、漢方相談を始める。

この症例も初回相談当初は前任者が担当。

その時々の口唇の皮に対し、漢方を数種類運用していた。

16年10月の画像

17年1月の画像

17年6月の画像

18年1月の画像

18年6月の画像

19年1月の画像

19年6月の画像

20年1月の画像

20年6月の画像

この女性の場合、漢方に対する効果がシャープではなく、初回相談が16年9月中旬から開始しているが、卒業までに4年近くの時間を要している。

剥脱性口唇炎の問い合わせでは、治るまでにどれくらいの時間がかかるのか?という質問がとても多いが、数年単位で漢方を使用するケースはかなり多いので、そんなに簡単に治るものでないことは知っておいていただきたい。

またすべての症例でよくなっているというのは事実上不可能で、これまでの経験で剥脱性口唇炎に罹患した原因が僕の知りうる範囲内での病理反応の場合には、改善の余地があるが、そうではない例外の場合、何をどうしても動かないこともあるこも併せて知っておいていただきたい。

この疾患が西洋医学的な治療でどれくらいの人が治っているのか、また自然治癒する可能性があるのかなどに関しても、当店には何をどうしても治らない人ばかりが来るので、それらの情報は一切分からない。

ただ相当数の人が相談に来られているという事実のみが存在するだけである。

この女性の場合は、口唇の皮の新陳代謝を阻害する邪を駆逐し、それによって皮の肥厚が落ち着き、薄い状態で延々と剥がれることを繰り返すようになっていた。

そこで漢方では皮の新陳代謝を改善すべく、活血や補血、滋陰、補気の硬化のある漢方を数種類運用して、できるだけ正常化されるように工夫した。

20年1月から6月の間に、皮の状態が一気によくなっていたが、これはなかなか改善しないことに対し、モノを動かすための陽気が大きく欠損しているのではないかと考え、これまで使っていた方剤に1つだけ生薬を加えたところ、その予想が的中し、そこからグングンよくなっていった。

6月の段階で、口唇の皮はほとんど剥がれなくなり、見た目はずっと普通に見えるようになり、本人もほとんど口唇のことを気にすることがなくなったということもあり、漢方の服用を今月最後にすることになった。

このような症例を提示すると、「漢方で治るかもしれない!」と大きな期待を寄せて問い合わせをしてくる人もいるが、実際は、試行錯誤の連続で、口唇の画像を何十枚と確認し、変化に対し、何がどうなっているのかを延々と考え続ける毎日である。

決して安価ではない自費の漢方を服用している以上、目に見える効果がほしいのは相談者のみではなく、こちらも同様である。

夜も眠れないほど、色んなことを考えて、全く何の資料もない中、1つ1つの病理を想定し、方剤運用し、その効果を確かめ、毎回反省と考察を繰り返し、口唇のことが気になって精神的に不安になっている相談者と漢方相談を行うストレスは尋常ではない。

だからこそ、こちらでは明確なルールを設定し、そこから逸脱する人の漢方相談はお断りさせていただいているのである。

いろいろな症例を経験し、そこから得たものも大きく、それを他の相談者に還元するため、日々、勉強の毎日であるが、本当にこの疾患を改善するために、こちらも寸暇を惜しんで精進していることを少しでもわかっていただけるとありがたい。

そしてこの女性のように時間がかかりながらも、少しずつ好転し、悩みに悩んでいた疾患が治ってくれることが何よりも臨床家としてうれしいのである。