剥脱性口唇炎コラム1

剥脱性口唇炎という疾患は、自然に起こるケースはなく、ほぼ100%人為的である。

① 少年少女など身体が未熟なものに多い。(皮膚のバリア機能、五臓六腑の機能が弱い)

② ケガ・唇の皮を剥がすなど物理的刺激により粘膜構造が破壊される。

③ さまざまな薬品の使用から症状が発生する。

剥脱性口唇炎の症状は、口唇の上下が重なり合う部分に起こることが圧倒的に多く、上下唇共に鼻腔・顎付近の唇外縁にまで広がっているケースは少ない印象がある。

口唇の構造は、乾燥しやすく脆弱な構造であり、細胞同士の接着は強固ではなく、通常、約4日サイクルで新陳代謝を繰り返している。剥脱性口唇炎では、物理的・化学的刺激により、これらの構造が破壊され、細胞同士の接着が異常に強くなり、酵素反応を通じた新陳代謝がうまく機能せず、皮が剥がれないため、どんどん皮が厚くなっていく。

これらの原因は、物理的・化学的刺激により、口唇の皮膚構造が傷つき、それに伴って免疫反応が起こり、炎症性物質の拡散⇒正常細胞の誤爆⇒次々に口唇構造を破壊⇒剥脱性口唇炎へと発展する形をたどっているのではないかと想像する。

そう考えないと、物理的に剥していた部分、リップなどで荒れた部分以外に症状が広がるというメカニズムを説明できない。

多くの場合、初発の患部から、時間の経過とともに徐々に範囲が広がったり、下唇だけだった症状が上唇に移行していることから、炎症性物質が何らかの形で周囲に拡散し、それによって患部が広がっていると考える。

つまり、剥脱性口唇炎の特徴として、口腔内には症状が広がらず、あくまでも口唇で症状が止まっているということ、症状は上下の口唇が重なり合う所が中心であり、人によっては、口唇の肌肉層のシワが深くなったり、正常な時と比べて口唇が2倍近く大きくなってたらこ唇になっていることもある。また剥脱性口唇炎の場合、口唇が剥がれた後に赤味・熱感・ヒリヒリ感など熱証を示す所見はあまり出ないことから「急性炎症型」ではなく、あくまでも、バリア機能の破壊・慢性炎症などによる邪(炎症性物質)の停滞による邪正闘争によって生じている症状であると想像している。

ここから言えることは、剥脱性口唇炎になった場合、口唇の症状に悩んで、皮を剥がす行為、少しでも見た目をよくするためにリップやワセリンなどを塗布する行為、洗顔、入浴、食事など日常生活の中で、誤ったケアをすることは、「慢性炎症」「バリア機能の破壊」を助長することになり、反って症状を悪化させてしまう危険性があることを知っておかなければならない。

昨今では、インターネットで情報を集める人が圧倒的に多いが、それらの情報が、今現在の自身の状態と一致しているとは限らず、他人にとって症状が改善した条件が、必ずしも自分にフィットしているとは言い切れないことを頭に入れておく必要がある。

当店に相談に訪れる方も、漢方を始めるまでに実に様々なケアをしているが、見当違いのケアをしていたり、過度に神経質になっていたりするケースも少なからずあり、口唇の状態を診てアドバイスを行うと、「え~っ!!」と驚かれる方も多い。

重要なことは、剥脱性口唇炎は免疫の誤作動による「慢性炎症」であり、いかにしてこの免疫の誤作動を落ち着かせていくかを考えていくことである。

そのためには、日常生活において誤ったケアをしないこと。それからなぜその免疫の誤作動が起こっているのかという根本的な原因を探り、それらを落ち着かせる対策を取ることである。