剥脱性口唇炎の相談を受けていると、必ずと言っていいほど「どれくらいで治るでしょうか?」「いつくらいに治るでしょうか?」「どれくらいで効果が出るでしょうか?」という質問を受ける。
これは、同じ剥脱性口唇炎でも、人によって病歴・性別・経過・状態が著しく異なるため、「〇〇くらいで治りますよ」とは言えないのが現状。
そしてこの「治る」という言葉にも注意が必要だ。
それは、人によって「治った」という基準が全く異なるからである。
ある人は、「ある程度、改善したらいい」と思っているし、またある人は「完璧に治したい」と思っている。
つまり本人がどこまで治したいのかによっても、漢方を服用する期間はかなり違ってくる。
これまでの経験における大まかな目安については、剥脱性口唇炎と思っていても、ステロイドが効かない状態で、かつ急性炎症に近くて病歴が浅い場合には1か月~3か月くらいでずいぶん症状は軽くなる。
一方、ステロイドが効かず、かつ急性炎症に近いものの病歴が数年単位で続いている場合には、炎症を取り除くのに半年、そこから口唇の血行をできる限り元に戻し、組織の形態異常を改善するのに年単位の時間がかかってくる。
さらに慢性炎症になり、剥脱性口唇炎になっている場合には、1か月やそこらで劇的に改善することは少なく、半年から1年以上の経過を経て、徐々に口唇の状態が好転するケースが多い。
剥脱性口唇炎の場合、基本的にはアトピー性皮膚炎とよく似ているものの、ステロイドが効果を示さないこと、皮膚と口唇とではターンオーバーの期間が全く異なるという違いがあることに注意する必要がある。
その違いのために、アトピー性皮膚炎では滅多に使用しない漢方を使うこともある。
また根気強く漢方の服用を継続することで剝脱性口唇炎の状態が8割方改善していても、何かのきっかけで急性炎症が起こってしまい、振出しに戻ってしまうこともある。(特に夏の時期に患部に細菌感染を起こし、化膿したりするケースが多い)
この場合でも数か月間、急性炎症の漢方を使うことで状態を回復させ、その後、新陳代謝を元に戻す漢方に切り替えて、さらに数か月の服用することでスムーズに改善させることができている。
そうではなく漢方を服用して以来、一見すると何の異常もなくなり、剝脱性口唇炎であることを忘れるくらいまで回復するケースもある。。
この場合には、漢方の使用を中止する人もいるし、服用量を1/3などに減量して地味に継続する人もいる。
いずれにせよ急性的な口唇炎でない限り、本人が満足するまでの回復には、1年以上の期間を要することが少なくない。
いつ治るのかは誰しも気になるのは当たり前なのだが、そんなに簡単な疾患ではないので年単位での治療を頭に入れておくのが一番良いように思う。