急性炎症でない慢性的経過をたどっている剥脱性口唇炎では、何らかの原因によって正常な範囲から逸脱した口唇表皮層の皮の新陳代謝異常である。
影響を及ぼす原因としては、ステロイドや抗菌剤、抗真菌剤、保湿剤などの薬剤性、剥がす、水分、唾液といった物理性、紫外線による光線性などが主だ。
これらの原因により、口唇の皮がダメージを受けた結果、頻繁に表皮を脱落させることによって何とか口唇組織の機能や構造を維持しようとしている。
つまり、剥脱性口唇炎は、生理的病理反応と考えてよい。
ではこの状態から離脱し、病理反応を軽減させて、もとの生理的状態(新陳代謝の状態)に戻すためにはどうすればよいか?
必死にバランスをとって、生理的病理反応状態のスイッチが押され続けている限り、今の状態からの離脱は難しいのだから、漢方で病理的反応にアプローチしつつ、原因と思われるものから徹底的に患部を遠ざけて、そのスイッチのボリュームを絞っていくしか方法はない。
必死にバランスをとっている状態に対し、西洋医学の外用薬などで無理やり反応を引き出そうとするとしっぺ返しを食らう。
口唇炎を改善するには、必ずこの視点に立ち、ボリュームを徐々に絞っていって、バランスを正常側に持って行き、皮の状態を安定的にしていくしかない。
ただし人によって、それに対する反応率は著しく異なるため、言葉では言っているが、実際には難しい。
剥脱性口唇炎は、残念ながら自然に生じる疾患ではない。自分が口唇に対し、何らかの刺激を与えた結果、生じるものである。それによって患部がダメージを受け、歪な状態になっているように見えるのだが、生体はその中で必死で患部を守らなければいけないと必死でバランスを取っているのである。