剥脱性口唇炎に悩んでいる方の何と多いことか・・・
西洋医学ではうまく治らずに、右往左往されている方からの相談依頼ばかりではあるが、正直に言えば、漢方で治そうとしても非常に根気が必要だ。
数か月で完全緩解する症例は極めて少ない。
少なくとも年単位は必要だ。
数多くの症例を経験し、ある程度はパターン化できているし、漢方を使うことで割とスムーズに行くケース、なかなか焦点が合わないケース、全く効果のないケースなど、ホント個人差がある疾患だなと感じている次第である。
中には自分の思うようにいかず、そのストレスをこちらにぶつけてくる人もいるが、こっちは毎回、必死で漢方を使ったことで口唇炎の状態がどのように変化しているか、細部にわたって観察し、生薬のみならず、各種エキス剤のg単位まで考えて処方を導き出し、「これでうまくいくはずだ」と願いにも近い確信をもって提案している。
不安があるのはとても良く理解できるし、改善しているかどうかも分からない中、自費の漢方を続けることに対する金銭的な負担も理解できるが、僕はあなたの敵ではない。
たぶん、今まで剥脱性口唇炎を相談してきた医療従事者の中で、もっとも真剣にその口唇炎を改善するための方法を考えている一人だ。
口唇炎の相談を新規で受けるたびに、僕は「今回の症例は素直に動いてくれるか、相談者の人間性はどうか、自分の考え方が通用しなかったら・・・」と極度のストレスとの闘うはめになる。
できることなら、もうこの仕事を辞めたいと真剣に考えるほどのストレスを抱え、「なぜ口唇炎が起こるのか、それを改善するために、まだ自分が理解していない部分があるのではないか」と眠れない日々を送り、できることならそんな毎日から解放されて楽になりたいと思いながらも続けているのは、やっぱり改善した人からの感謝の言葉があるからである。
西洋医学では、当然の如く、外用薬でその症状をごまかすが、逆に言えば、外用薬を中止すれば、酷い状態になってしまうとわかっているから、延々とその外用薬を使い続けて不安を募らせている人に対し、そこから抜け出して、改善の道を示して漢方を使用しながら、ゆっくりではあるものの確実に以前とは違う状態になっていき、そこからさらに時間をかけて普通の口唇に近づいっていくことができたときに、「あ~やっぱりやっててよかったのかもな」と思う気持ちが、口唇炎の漢方相談を続ける原動力になっている。
仮にそれがなくなれば、確実に僕はこの相談を辞めるし、自分が培ってきた実践と理論は捨て去るだろう。
それくらい相談を受ける側の僕にもストレスがあるということを知っておいてほしい。
だからこそ、漢方相談を行う場合には、お互いがストレスを増大させないようにチームとなって、とにかく前を向いて試行錯誤しながら、時間がかかっても改善に向けて進んでいくというのが必要なのだ。
よく中医学系を学んだ専門家が「口唇は脾と関係があるから、胃腸系がどうのこうの」などという中医学基礎理論を元にした言葉を口にするが、「アホか!」と言いたい。
そんなことで治るなら、誰も悩まんわい。
剥脱性口唇炎を漢方で改善しようとするなら、そんなしょーもない基礎理論の中で概念的な言葉遊びに終始するのではなく、各個人の口唇炎の状態を詳細に観察し、寒熱虚実の八綱弁証、気血津液の盈虚通滞、病位、病勢を十分に加味した上で病因病理を構築し、そこからさらに多数のエキス剤・単味エキス剤を上手に組み合わせて、その人にフィットした漢方処方を導き出す必要がある。
さらにノーマルの口唇にするためには、都度、微調節が必要であり、一度フィットした漢方を延々と続けることはない。
一時期はアトピー性皮膚炎と関連している可能性などあらゆる方法を模索してきたが、ほぼほぼアトピー性皮膚炎の理論は通用しない。
ましてや通常の漢方療法の理論からかなり逸脱した組み合わせが必要なこともある。
それくらい剥脱性口唇炎を漢方での改善には工夫が必要だということだ。