剥脱性口唇炎に悩み、相談に訪れる方の多くは、過去にステロイドを使用した経験を持っている。
口唇が荒れたり、ヒリヒリしたりしたときに皮膚科に受診すれば、外用薬としてステロイドが当たり前のように処方される。
そしてそのような症状に対してステロイドを使えば、ほとんどのケースで症状は緩解する。
しかしながら、極めてごく一部のケースで、ステロイドが口唇に合わず、副作用が生じて、たとえば免疫力が低下してカンジダが繁殖したり、細菌感染を起こして化膿したり、傷ついた部分にステロイドが付着することで新陳代謝のメカニズムが狂ったりして、症状を一気に悪化させてしまう。
それによって、口唇の状態は、これまでよりも一層ひどい状態になり、ほとんどの場合、外用薬が怖くなって使用を中止する。
外用薬を使用中止することで、自然に症状が緩解するケースもあるが、中には使用を中止したところで症状が改善せず、どんどん範囲・程度が悪くなり、剝脱性口唇炎となってしまう人もいる。
このような状況になった方々が、廣田漢方堂へ相談に訪れるのだが、総じて外用薬を使ったことを後悔している。
「もし外用薬を使わなければ、こんなことになっていなかったかもしれないのに・・・」
と嘆かれる。
剝脱性口唇炎の相談を受けていると、「口唇炎にステロイドを使用するとこのような弊害が起こる可能性があるのか・・・」と思うととてもじゃないけど怖くて使えない。
しかしながら、一方で上述のようにほとんどの人はステロイドで治ってしまうことも忘れてはいけない。
この場合、治る人と悪化する人の間には、どのような違いがあるのか・・・
東洋医学では次のように考えている。
「邪が集まる所、必ず正気の虚がある」
ステロイドを一種の外邪(外因)として考えた場合、それが薬として効くのか、毒として作用するのかは、その人が持っている体質や体調に左右されるということである。
つまり、本来なら口唇炎を治す方向に働くステロイドが、逆に口唇炎を悪化させる方向に向かうその裏には、本人が持っている体質が大きくかかわるのだ。
だから東洋医学では、剥脱性口唇炎という病名を意識しながらも、各個人の体質、そして症状が発生したときの状況を詳しく聞いて、改善すべきポイントを探り、その部分に対して漢方薬を使用するのである。
どのような疾患でも、それが生じるきっかけが存在し、そのきっかけが無害になるかどうかは本人次第。
ただしステロイドの使用によって剝脱性口唇炎になってしまった方が数を多くいることも忘れてはいけない。
口唇炎になったからといって、軽々しくステロイドを使ってしまうと、思わぬ症状が出てくることもあることを決して忘れてはいけない。