自分にも年頃の娘が2人いるが、この年になるとお洒落がしたくなるもの。
世間も同じだと思う。
友達とみんなで、どんな口紅、リップがいいか色々と試したりしてお洒落を楽しむことに対しては、何の意義もないが、実はここに大きな落とし穴がある。
10代の女性の口唇炎の相談では、外国製の染料系の口紅やリップを使った直後から、口唇が極端に荒れ出し、痒みや水疱ができたり、剥脱性口唇炎に発展してしまっている例が少なくない。
相談に来た本人は、周りの友達は何の問題もなかったのに、なんで自分だけがこうなってしまったのか・・・と嘆いている。
一般的にこれらの商品は顔料系のものが多い。
顔料系と染料系の違いは、取れやすさの違い。染料は名の通り、染めているのだから、なかなか色素が口唇から取れない。これはいうなれば、キレイな口紅の色が長続きするということになるのだが、裏を返せば、口唇に微細な傷などがあり、染料が傷に入り込んで免疫反応を起こしてしまうと、取れないことが仇となって、免疫反応が加速し、アレルギーや炎症が長期に及ぶ危険性があるということになる。
口唇に微細な傷などがあるかどうか、使用した商品に対しアレルギーを起こすかどうかなんて、本人に判るはずもなく、症状が発生して初めて大きく後悔する羽目になる。
これらの口唇炎が西洋医学的な治療でよくなれば、何の問題もないのだが、中には西洋医学的な治療で全く改善しない場合もあり、そんな方々が悲壮な顔つきで漢方相談に訪れる。
10代という多感な時期に、人目に付きやすい口唇の症状は、想像を絶するくらい精神的にダメージを与える。
漢方療法では、水疱ができたり、湿疹ができたりするパターンの口唇炎では比較的早い段階で完全緩解まで持っていけるが、滲出液が出てしまったパターンや剥脱性口唇炎に発展したパターンはとても難しい。
それらの場合は、大抵が長期戦になり、漢方を飲んだからと言ってすぐに効果を発揮するわけでもないため、継続できるかどうかは本人の精神状態による。
あまりにも精神状態が不安定な場合は、こちらの漢方療法に支障をきたす(客観的・冷静的に病態を把握できず、本人の訴えに右往左往してしまう。)ため、漢方相談を断ることもある。
こういう事例も多々経験するほど、お洒落のために安易に使った口紅・リップで難治性の口唇炎を発症する場合があることは覚えておいて損がない。自分にその災難が降り注ぐ前に、自分自身で防ぐことも肝心だと思う。